人類がバージョンアップした先にある宇宙

「世界は確実に変わっている」

見識が高い作家が書いた本はいつもそう気付かせてくれるが、世界で起きている変化を一般の読者にわかりやすい言葉で説明してくれる作家は少ない。そんな数少ない作家の中でも、私が好んで読んでいるのが高城剛氏の著作だ。そして、今回読んだのは2019年に集英社ビジネス書から刊行された『2049日本がEUに加盟する日HUMAN3.0の誕生』 本書に書かれている内容は、あくまで高城氏による未来予測である。しかし、世界有数のフューチャリスト(高い未来予測精度を持つ者)、各国の学者、政府高官や起業家たちのインタビューを元に作られていることから信用性は高いと言えるだろう。

「最先端のテクノロジー」と聞いて、皆さんが思い浮かべるものはなんだろうか?私は人工知能(AI)、自動運転技術、ブロックチェーンなどを思い浮かべる。しかし、本書を読む限り、それらの最先端テクノロジーはすでに“最先端”ではない。私は本書を読んで、いかに私が無知であったかを痛感した。

人類がいま恐るべきなのは地球温暖化ではなく地球寒冷化

たとえば、「地球温暖化」だ。私たちは「北極の氷が溶けているんだから地球は暖かくなっている」と感じる。地球温暖化に関してはメディアでも頻繁に報道されるし、近年の夏は毎年前年より暑く感じる。しかし、実際のところ、私たち人類がまず考えなければいけないのは地球温暖化ではなく、「地球寒冷化」だと言う。地球は数百年単位で見れば暖かくなっているが、数十年という短期的に見れば確実に寒冷化に向かっているようだ。

数十年などの短期的な寒冷化は「小氷期」と呼ばれ、小氷期は太陽の活動が低下することが発生する。世界はすでに何度か小氷期を経験しており、17世紀には英国・ロンドンでもテムズ川が凍結したり、江戸時代の日本でも町に雪が積もる風景は一般的だった。小氷期は再びやってくる。世界は小氷期に今年2020年から入っていき、2030年にはピークを迎えるようだ。そうなると、どれほどテクノロジーが進化した現代でも、太陽の動き次第で、私たちは凶作に陥ってしまう。そこに人口爆発が重なれば、地球はもはや人類に合った場所ではなくなる。

シリコンバレーはイノベーションの中心でなり続けるのか

本書はアメリカ、中国、インド、EU諸国の今後についても非常に面白く書かれている。これまで世界のテクノロジーの中心的存在であったアメリカのシリコンバレーを中国やインドは追いかけきた。その成果は目覚ましく、中国は「ドローン」開発で成功し、現在世界のドローン市場で7割以上のシェアを誇る会社は中国・深センにあるDJI。サンプリングソフトやデジタル楽器など音楽のイノベーションの中心地はドイツ・ベルリン。ビデオゲーム業界でもっとも存在感を放つのはスコットランドのエデンバラを中心とした「シリコングレン」と呼ばれる地域。ハリウッドで使われるCG技術もアメリカではなく、カナダとインドで作られており、経済規模で言えばインドのボリウッドはすでにアメリカのハリウッドに勝っている。シリコンバレーを中心とした世界図は着々と変わっている。

人類がバージョンアップを迫られるとき

やはり、もっともインパクトがあったのは本書タイトルにある「HUMAN3.0」というアイディアだ。人類は気候変動に対応するため、生まれ変わってきた。10万年前にネアンデルタール人と融合することで食物連鎖の頂点に立ったホモ・サピエンスがHUMAN1.0。そしてそれから7万年後、気候変動による食物危機が起こりアフリカから紅海を越えて地球全土に広がっていったホモ・サピエンスがHUMAN2.0。この時点では、HUMAN2.0にとってアフリカこそが「世界」であったため、紅海を超える行為にはまさに進化が必要であった。それから私たちホモ・サピエンスは農業革命により、今まで生き延びてきた。つまり、現代人はHUMAN2.0だ。そしてえ幸運なことに、世界から脱出しなければいけないほどの危機には直面して来なかった。

 しかし、世界は確実に変化し、気候変動が起こり始め、人類は人口爆発により地球以外に居場所を求める時代に突入する。なんせ地球のキャパシティは50〜100億人。このままいけば、2055年には100億人に到達する見込みで、食料は確実に足りなくなるという。そのときに、人類はHUMAN2.0からHUMAN3.0へのバージョンアップを求められるというのだ。では、実際にHUMAN3.0とはどのようなホモ・サピエンスなのだろうか?

HUMAN3.0は地球ではなく、宇宙空間に合わせた身体で作られたホモ・サピエンス。今の私たちの身体をベースに、能力の拡張を行い、身体や脳はカスタム可能になり、パーツの入れ替えもできる。つまり、私たちはスマートフォンのようになる。実際に、人体にマイクロチップを入れる事例はすでに存在する。スウェーデンのBioHax社の代表ユアン・ウステルンド氏は自身の身体に4つの生体対応チップを入れており、Suicaのような使い方をしているという。そして遺伝子研究が進んだ今、人類は人工的に生物を生み出すこともできる。親が好きなように生まれてくる子供をデザインする「デザインナーベイビー」もすでに道が拓けている。DNAを自由に扱える能力がある今、人類は自然に運命を任せるのではなく、自主的に進化できる。

最後に

本書を読む限り、これからの地球に危機感を持たざるおえないと同時に、人類が宇宙に向かうときまで生きてみたくなった。そのころ、HUMAN2.0の私はHUMAN3.0の新人類が宇宙に飛び立つ光景を指を咥えて眺めているのだろうか。

ぜひ興味がある方は本書を読んでみてください。 

以上、2049日本がEUに加盟する日HUMAN3.0の誕生』の感想文でした。